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詩(うた)と小説で描く「愛の世界」 異性を誘う匂い。其の一
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異性を誘う匂い。其の一

“肌が合う”という言葉は男女の仲の相性の良さで使われる。
これは性格が合うという意味合いもあるが、むしろ言葉では言い現わせぬ不可思議な引力を
感じる時に使われる場合が多い。こういう時は、お互いの体臭が大きく影響を及ぼしている。
あまり意識しないかもしれないが、人は皆、それぞれが放つ体臭によって、
相手を選り分けしているのである。ましてや、男女の仲ではお互いの体臭は大きな問題。
好みの匂いを放つ異性に対して惹きつけられるのは本能的なものなのである。

◆欲情を煽る香り
画像 224
京都は、美しく清潔な町です。景色は勿論ですが、“匂い”というものがあまりしません。
住んでいる人々は大げさに喜怒哀楽をさらけ出すような事はしないし、食べ物屋だってわりと
小ざっぱりした店ばかりです。その点お隣の大阪は逆ですよね。“匂い”の町です。
人々の表情も食べ物も景色も、京都から行くと匂いがムンムン漂ってくるのを感じます。

とくに冬の京都は、底冷えの寒さのせいで、全ての匂いが薄れてしまいます。
しかしだからこそ、暖かい匂いや魅力的な匂いに対する憧れも時には募って来たりもする訳です。

今から四十五年ほど前、当時私は京都の大学の大学院に通って、
中国史の博士課程を進んでいました。
根が真面目で見かけもパッとしないし裕福な身でもなかったから、かなりわびしい青春時代でした。
もちろん彼女なんていなかったし、お金で女を買ったこともない。つまり童貞でした。
でも性欲はむしろ、人一倍強かったかも知れません。
だから却って女を買うことが出来なかったんですね。買えばさらに惨めになってしまいそうで。

そのころの私の唯一の楽しみは、大学の帰りに川原町の喫茶店に寄って、
コーヒーを飲んで帰ることだけでした。たまに友人と入ることもありましたが、殆ど一人でした。
こげ茶色のかすかに木の香りのする落ち着いた雰囲気の店でした。

BGMは、クラシックのレコード。リクエストすればかけてくれるのだけど、
田舎者で恥ずかしがり屋の私はしたことがありません。
シューベルトの「未完成交響楽」が好きだったのですが、
リクエストしなくても月に二、三度はかかっていました。そしてそれを訊けた時は、
なんだか次の日に良い事がありそうな幸せな気分になれたものでした。


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白のトックリセーター
後に私の妻となるその女性と出会ったのは、寒い二月のその喫茶店でした。
夜の八時ごろでした。私が扉を開けて入っていった時、
彼女がちょうど外に向かって歩いてきてすれ違いました。

白のトックリのセーターを着て、黒いオーバーを小脇に抱えていました。
地味で特に目立つと言うほどの美人でもなかったのだけれど、
其の時私の胸は妖しくときめき、思わず振り返ってしまいました。

とてもいい匂いがしたのです。なんだか生温かくて、南の島の花の蜜のような匂いでした。
南の島の花の蜜がどんな匂いかと聞かれてもうまく説明出来ないのですが、
私の頭の芯を刺激するちょっとエロチックな匂いでした。
別の日に友人を連れてきて確かめて貰ったのですが、「匂いなんて特別ないじゃないか」
と言われました。だから私だけが感じるかも知れないのだけれど、確かに妖しく匂ってきたのです。

扉の前でオーバーを着ながら、娘もこちらを見ていました。
と、思ったら実は、娘の連れの男がレジでお金を払っていたのでした。中年の男でした。
男は、娘の腰に手をまわしながら店を出て行きました。変な取り合わせのカップルでした。
不倫の仲のようにも見えるが、娘の後ろ姿はどこか硬ばって嫌がっているようでもありました。

席に着いてもまだ、私の鼻のまわりに娘の匂いが漂っていました。
もしかしたらこの後、口説かれてホテルに連れて行かれるのかと思うと、
酷く落ち着かなくなってしまいました。またそんなことが有り得ると思えるほど、
娘の匂いが悩ましかったと言うことです。

娘は、毎週土曜日にその店にやってきました、あの中年男と一緒に。
私はもうたまらなく気になって、ある日遊び慣れている友人を連れてきて、
どんな関係らしいのか見てもらいました。
その時です、たいして匂わないじゃないか、と言われたのは。
じゃあどんな関係に見えるかと聞くと、わからない、と言いました。

もしかしたらその時彼は、“できている”と感じていたのかも知れません。
でも純朴な私にそれを告げるのは気の毒だと思って、口を濁したのでしょうか。
遊び人だけあって彼は其の点大人で、中途半端に色気づいた連中より、
ずっと信頼できる男でした。
三月の京都
「ほんとうは、できている、とわかってるんじゃないの?」
「いや、本当に判らないんだ。できていたら、こんなところに寄り道する必要ないだろう」
「うん、かもしれないなあ」
私にしても、できればそんな関係だとは思いたくなかったのは当然のことです。

彼の話によれば彼女は、お茶くらいなら誘えばわりと簡単に着いて来るタイプなのだそうです。
「でも、意外に身持ちは硬いんじゃないかなあ」
とも言っていました。

話しながらいつも花の様に笑っている娘でした。その笑顔を離れた席から眺めるたびに私は、
最初にすれ違った時の甘くなやましい匂いが、顔の前に蘇ってくるのでした。

三月になって京都の町のあちこちで咲き始めた花を見かけるようになった頃、
娘は突然店に来なくなりました。ああとうとう口説き落とされてしまったか、
と私は落胆し、同時に学問への情熱も薄れてゆくような無力感を覚えました。

店の中では時々お互い目が合うこともあって、多少は向こうも意識し始めていたかも知れないのに、
結局は声一つ掛けられずにあんなさえない中年男に持ち去られてしまった。

彼女と出会って私は、この世には学問よりも大事なものもある、と思い始めていた矢先のことで、
あの中年男に対するコンプレックスばかりが募りました。
いつか博士号を得て講師になったら彼女を迎えに行こうなんて、
名前も住所も知らないのに勝手な妄想を膨らませていた自分が、
酷くみすぼらしいものに感じて来るのでした。
  1. 妻(夫)を語る
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ご挨拶

万屋 太郎

Author:万屋 太郎
2006年9月に初稿をUPしてから
早くも10年が経過いたしました。

生まれ育った横浜を離れて今年の1月に、
静岡県伊東市に移住いたしました。
山あり、湖あり、海あり、の自然環境はバッグンです。
伊東には多くの文人が別荘を持ち、多くの作品を
手がけて居られるようです、私もあやかって、
この自然環境の中での創作活動が出来ればと思っております。

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